ナスダックにレバナスの2倍投資したら儲かるのか?!

米国の「S&P500」や「NASDAQ100」に多くの資金が集まっています。

そしてもう一つ、NASDAQ100の2倍の値動きをするとあって人気を集めているのがレバレッジの利いたNASDAQ、通称「レバナス」です。

値動きが激しいので、投資額が大きい人は1日で数十万円あるいは数百万円のレベルで資産が増えたり減ったりします。

そんなレバナスが、普通のNASDAQ100(以下、フツナス)の2倍の動きをするということですと、レバナスに「1」投資しておけば、フツナスに「2」投資した場合と同じだけお金が増えるのだろうかという疑問が浮かんできます。

この疑問については、運用会社から言われたのは、『資金があるならば、フツナスに「2」投資した方がレバナスに「1」投資するよりもお金が増える』との事でした。

また、ネットで色々と記事を見てみたところでも、同様の意見が大勢を占めていました。

私も気になって調べてみたのですが、「大和アセットマネジメント」が展開するフツナス「iFree NEXT NASDAQ100」と、レバナスの「iFree レバレッジ NASDAQ100」それぞれの直近のリターンを見てみますと、直近1ヶ月あるいは1年間という期間においてフツナスに200万円投資した方がレバナスに100万円投資するよりもお金は増えたことになりますが、3年間という期間で見てみると、レバナスに100万円投資した方が、フツナスに200万円投資するよりもお金は増えたことになります。

そこで今回は、もっと過去に遡ってみたら、どっちの方がお金が増えていたのかを検証します。

そして、どういう状況ならばどちらが有利になるのかを解明していきたいと思います。

念のため、ナスダックやレバナスについて基本事項だけ簡単におさらいしておきますと、アメリカには主要な証券取引所が2つありまして、一つはNY証券取引所。もう一つはナスダックです。

アメリカでメジャーな株価指数として「S&P500」がありますが、S&P500はNY証券取引所とナスダックどちらも対象としていまして、上位500銘柄で構成されています。

500銘柄といっても、これでアメリカの時価総額の約80%をカバーしていますので、アメリカの経済をほぼそのままに反映する株価指数です。

対して「NASDAQ100」というのはナスダックだけを対象としていまして、ナスダックに上場する企業のうち金融セクターを除いた上位100銘柄で構成されています。

ITや一般消費財など、いわゆる「ハイテクセクター」と呼ばれる分野の比率が大きくなりますので、株価の成長が著しい分野に集中投資できる株価指数と言えます。

NASDAQ100は分散が利いていない分、S&P500よりも日々の値動きが大きくなりますが、更にこのNASDAQ100の2倍の値動きをする投資信託が存在しまして、これが「レバレッジナスダック」、略して「レバナス」と呼ばれるものです。

レバナスの値動きの仕方については、正しい認識を持っておく必要があります。

レバナスはフツナスの「日々の」値動きの2倍の値動きをします。なので、フツナスの価格が翌日に下落して、その翌日に元値に戻ったとしても、レバナスは元値には戻りません。

例えば、仮にフツナスの価格が100だったとして、これが翌日に5%下がったら95となりまして、一方のレバナスは90になります。では翌日にフツナスの価格が95から100に回復すると5.26%の回復になりますので、レバナスは90から10.53%回復することになって価格は99.47になりますので、100には戻りません。レバナスはあくまでフツナスの「日々の」値動きの2倍動くものという認識をしっかりと持っておく必要があります。

レバナスはこのように価格の上下を繰り返していくうちにジワリジワリと資金が減っていくという可能性を含んでいます。これは「逓減リスク」と呼ばれますが、こういった可能性をはらんでいる点には注意が必要です。なので、1年後のリターンを比較したときに、レバナスがフツナスの2倍になっているかというと、必ずしもそうではないことは認識しておく必要があります。

フツナス×200万円 vs レバナス×100万円(10年間)

では、これを踏まえまして、過去がどうであったかを検証していきます。

まず、2006年6月から2021年10月の15年強のうち、10年間の一括投資をするものとして検証します。

最初は2006年6月から2016年5月までの10年間、次は2006年7月から2016年6月までの10年間、といったように投資期間を1ヶ月ずつズラして区切っていくと、最後の2011年11月から2021年10月までの10年間に至るまで、全部で66通りになります。

この66通りの期間において、フツナスに200万円を投資した場合と、レバナスに100万円を投資した場合とで、どちらの方がお金が増えたかを見ていきます。

結果としては、フツナス200万円が16勝、レバナス100万円が50勝と、レバナス100万円の方がお金を多く増やせるパターンが多かったという結果となりました。

なので、運用会社が言っていたような一般的な話とは異なる結果となりました。

念のため、何と何と比べているのかをクリアにしておきますと、投資元本はフツナスが200万円で、レバナスが100万円です。この金額を一括投資して、10年間放置します。

例えば2006年6月から2016年5月までの10年間であれば、フツナスは200万円の元本が603万円になった、つまり403万円増えました。一方のレバナスは、100万円の元本が484万円になった、つまり384万円増えました。

なのでフツナス200万円投資の方が19万円多く増えていますので、この期間についてはフツナス200万円の「勝ち」となります。

もちろん、リターンの率を見てみれば、金額に関わらずフツナスは201.6%、レバナスは383.9%となっていて、レバナスの方がリターンの率は高くはなっていますが、「増えた金額」ということになると、この期間においてはフツナス200万円の方が大きくなっています。

このように比較をしていきますと、この中で、お互いの増加額が一番小さかったのが2006年12月から2016年11月の10年間で投資したケースで、フツナス200万円が生み出した金額が377万円、レバナス100万円が生み出した金額が315万円です。もちろんリターン率で言えばレバナスの方が高いですが、増えた金額としてはフツナス200万円の方が大きくなっています。

一方で、お互いの増加額が一番大きくなったのが2011年10月から2021年9月の10年間で、フツナス200万円が生み出した金額が1,356万円、レバナス100万円が生み出した金額が3,354万円です。

傾向としてはこちらのグラフが示すように、2006年や2007年に開始して10年間投資した場合にはフツナス200万円の方が勝っていて、2008年以降に開始して10年間投資した場合はレバナス100万円の方が勝っています。

相場の環境としてはどうだったのかというと、NASDAQ100のチャートを見てみますと、2006年から2016年の期間においても長期的に見ればしっかりと右肩上がりになっているので、もちろんフツナスもレバナスもしっかりとリターンはプラスにはなっていますが、前半にグダグダとレンジ相場が続いていたため、レバナスの方は先ほどの「逓減リスク」の影響がもろに出てしまったものと考えられます。

一方で2009年からはNASDAQ100を含めて米国株が大変順調な右肩上がりに転じていますので、このあたりから投資を開始したケースについてはレバナスの逓減リスクはほとんど無くて、レバナスの方が只々お金を膨らませていくことができた形です。

フツナス×200万円 vs レバナス×100万円(5年間)

以上は投資期間10年での検証でしたが、レバナスへの投資をもっと短い期間でお考えの方もいると思いますので、5年スパンだとどうなるのかについても検証しました。2006年6月から2021年10月までの15年強を5年ごとに区切ると126パターンに区切ることができます。

そうすると結果としては、フツナス200万円が31勝で、レバナス100万円が95勝という結果になりまして、これもまたレバナス100万円の方が多くお金を増やせている結果となりました。

2008年の11月以降に投資を始めたケースであれば、軒並みレバナス100万円が多くのお金を生みだせていたことになりますが、それよりも前に投資を始めたケースではフツナス200万円の方がレバナス100万円に勝っています。

見づらいグラフで大変申し訳ないのですが、この検証で最も注目すべきは、レバナス100万円がもう少しで元本割れをしそうなレベルであったことです。

ここでの相場環境としては、2009年まではレンジ相場や下落相場が続いてしまいましたので、レバナスの「逓減リスク」の影響が大きく出ています。そしてとにかく投資期間が短かければ短い程、逓減リスクの影響が大きく出てしまいます

先程のように10年スパンで検証したところでは、序盤にレンジ相場で逓減リスクの影響が出ても、その後の値上がりでレバナス100万円がしっかりとしたリターンを出せていましたが、やはり5年間では逓減リスクのダメージを取り返すには時間が足りないようです。

フツナスやレバナスに限ったことではありませんが、インデックス投資で手堅くリターンを上げようとするならば、やはり基本となるのは長期投資だなと再確認させられます。

フツナス×100万円 vs レバナス×200万円 まとめ

ということで、「フツナス200万円の方がレバナス100万円よりもお金が増やせる」と一般的には言われていますが、今回検証したところ、必ずしもそういうことではなさそうです。

一般的にはそうなのかもしれませんが、たまたま2009年以降が見事な右肩上がりであったので、レバナス100万円の方がお金を増やせることが多かった結果になりますが、これから先もここまで見事な右肩上がりになるかというと、それは誰にも分かりません。

一般論の通りフツナス200万円の方がお金を増やせる環境が来る可能性は十分にあります。

なので、フツナス200万円とレバナス100万円のどちらを選ぶべきかというのを明言することは難しいですが、次のような点が判断基準になってくるものと考えています。

一つ目は当たり前のことですが、そもそも手元に沢山の資金が無いという場合は、レバナス一択になります。

二つ目としては、「NASDAQは今後もずっと右肩上がりだ」と考えている人はレバナスを選択されることで宜しいかと思います。

一方、「NASDAQは今後もずっと右肩上がりだとは考えられない」という人はフツナスを選択することになると思います。

そして、個人的にはこれが一番大きいと思うのですが、「日々、相場が気になって気になって、ストレスになりそうだ」という人は、フツナスを選択することを強くオススメします。結果的には、もしかするとレバナス100万円の方が合理的だったという結果になるかもしれませんが、特に資金を一括で投資することについては合理性だけで片付けることはできなくて、投資を長く継続するメンタルを保てるかという点も大変重要になります。

資産形成は長期スパンのインデックス投資が基本になると考えていますので、投資を長く継続することが何よりも重要です。

メンタル的にキツくなって、投資を途中で辞めてしまうかもしれないという人は、レバナスには手を出さずに、フツナスを選択された方がよいと私は思います。

ここまで、実際の値動きを用いた検証、そして考察を行ってきました。

フツナスとレバナス、どちらが正解ということはありませんので、どちらを選ぶのでも良いとは思いますが、どういったケースではどちらが有利になるのかということは承知した上で決定することが大事だと思いますし、投資をする上では合理性だけではなくてメンタルのケアも非常に大事だということは気に留めてもらいたいと思っています。

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